きものくらちの小牧店ブログ
日本の色 かさねのいろめ 蝉の羽 (せみのは)
襲の色目(かさねのいろめ)は四季折々の変化をその様相の比喩表現によって色彩として感じ取ってきた日本人が作り上げてきた配色法です。
これは日本が地理的に温帯に属し、気候が四季を持っていることに加え、日本人が季節に伴って身の回りで生じる自然の移り変わりを敏感に感じ取っていたからだと考えられます。ですので、紅葉などをみて美しいと感じるのは、世界の人、全てではなく、四季をかんじられる国に育った人だけの感性だというのを聞いたことがあります。
知られているところだと、平安時代からの十二単です。美意識の反映として、それぞれの季節にふさわしい色や模様が選ばれ使用されてきたことにあります。
今の時期のかさねの色目は「蝉の羽」は檜皮色(ひわだいろ)と呼ばれる茶色と深い緑の組み合わせ。色濃くなった夏の緑と幹の木肌を思わせるような配色です。
梅雨明けが近づき、和暦ではそろそろ水無月(別名、蝉の羽月)に入ります。
セミの一生には梅雨が大きく関係しています。
夏のセミは樹皮に隠すように卵を生みます。卵はそのまま冬を越し、翌年の梅雨の頃、孵化します。孵化した小さな幼虫はすぐに地上に落下し、地中にもぐりこみます。地中にもぐったセミの幼虫は木の根っこに小さな口をさしこんで、大きくなり、何度も脱皮を繰り返し、数年かけて成長します。長い年月を地中で過ごすことで知られているセミですが、日本のセミは2〜6年と色々です。そして、ちょうど梅雨明けの頃、天気のいい日の夕方、地中から這い出てきます。
今朝も、セミの大きな合唱で起こされました。都会の街路樹でもたくましく生きるセミですが、「樹木と雨」なくしては、セミは存続できず、梅雨どきに順当な雨が降らなければ、孵化した幼虫が地中にもぐる機会を逸してしまうことになりますし、羽化には順当な梅雨明けも必要です。
今日は、蝉を連想するような夏着物コーデ。年輪が見える木の帯留、帯は土、着物は蝉が鳴く、梅雨明けの空をイメージしました。
夏着物 東レシルック 絽 百緑
名古屋帯 誉田屋源兵衛 和紙 白
帯締め 絹 こげ茶
帯留 素遊 木
帯揚げ 丹後ちりめん 瓶覗/若草